8 Oct 2017
現代病の一つと言われているアレルギー疾患。厚生労働省の調べによると、この10年、アレルギー罹患数は急増し、2人に1人が何らかのアレルギー症状を自覚しているとの報告があります。
その中でも、食生活が制限され、ステロイド剤など長い投薬生活を余儀なくされているアトピー性皮膚炎に、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸が大きな力を発揮し、なかなか治まらなかった痒みがなくなった、掻き壊した肌が少しずつ回復してきている…などの臨床報告があります。
その反面で、痒みに我慢できずに掻き壊す肌が悪化してしまって、途方に暮れてしまう方もいらっしゃるようです。
オメガ3脂肪酸は、アトピー性皮膚炎の味方なのか、敵なのか、ゆっくりお話ししていきたいと思います。
アレルギー対策の救世主、オメガ3脂肪酸
アレルギーを改善するならば、オメガ3を摂取すればいい!オメガ3は刺身や青魚に多く含まれています。以前、DHAは「学習・記憶能力を伸ばす」として一般に広く知られました。
その時に多く青魚…イワシ・サバ・サンマなどが食卓に並んだなあと記憶するバブル世代も少なくないことでしょう。その頃、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患が軽減したとの臨床報告もあります。
刺身・青魚は、それ自体にDHAやEPAが含まれていますから、そのまま食すことで直接オメガ3が摂取できます。例えば、青魚の代表サバ100gあたりオメガ3含有量は1.5g…「なんだ、1.0g楽勝だわ。」と思った方、サバ一切れを量ってみてください。
スーパーなどの切り身一切れで約60gですから、二切れを1日で食さなければならなくなります。マイワシなら丸々1尾、サンマなら約半尾…魚離れが進んでいる現代で、この量を毎日摂取するのはかなり意識しないと難しいですね。
緑黄色野菜などにはαリノレン酸は多く含まれており、体内に入って活性酵素が加わると、その一部がDHA・EPAに変化します。
DHA・EPAに有効量となるαリノレン酸摂取量は2.0g/日…ほうれん草、こまつな、ケールなどに多く含まれてはいますが、緑黄色野菜で補うのには、2kg近くも食さなければならず、これも簡単に…とはいえないようです。
調味料として油を上手く使用することも有効です。ドレッシングや醤油代わりにエゴマ油を使用してみましょう。醤油風味ですから刺身や冷奴に直接かけて食しても大丈夫。
サラダの時には、ドレッシング代わりに緑黄色野菜や海藻類にかけてもいいですね。その上にくるみのトッピングなんていうのも相互効果を生み出しそうです。ただし、熱に弱く酸化しやすいので、炒め物には不向きで、また開封後は冷蔵庫保存で短期間に使用することがおススメです。
単体では難しいオメガ3の摂取ですが、複合的に使用することで、必要摂取量により近づくことを目指しましょう。
オメガ3の大敵、オメガ6
反対に、オメガ6を摂取するのは簡単です。肉や鶏卵は主菜としてそのものを食すことが多く、見た目には分からなくともパン・スナック菓子など加工食品や冷凍食品の原材料に用いられたり、調理の過程で調味料として使用されたりすることがあります。
成分表示があるものなら確認できる摂取量も、外食となるとそれも難しく、どのくらいオメガ6を摂取しているか、判断は無限大に困難となります。
こうして、アレルギーに対して有効なオメガ3よりも、現代人はオメガ6過剰となり、アトピーや花粉症などアレルギーの原因を進んで受け入れてしまっているのです。
そこで、大切なのは、その摂取比、バランスだということになります。必要摂取量はオメガ3が1.0g/日以上、オメガ6が9g/日以上(厚生労働省『日本人の食事摂取基準』より)といわれています。
その比率はオメガ3:オメガ6=1:4が理想的。ところが、現実は、オメガ3:オメガ6=1:無限大となり、オメガ3は大不足しているというよりも、オメガ6を大過剰に摂取していることを見直す方が先決だと思いましょう。
理想的な配合を実現している油はこれです。
アレルギー疾患を軽減させるには、オメガ6を含むリノール酸の多い油を断つことが大切です。リノール酸は不飽和脂肪酸ですから、体内生成ができません。それなら、口から摂取しなければいいのです!
加工食品や冷凍食品を避ける、外食をやめる、調理する時には油を使用する焼料理よりも蒸す・水炊きを採用するなど、対策次第でオメガ6を退けることが可能になるのです。
救世主オメガ3がアトピーを悪化させる?
アレルギーには、オメガ3を含む刺身や青魚がおススメ…ですが、これが、アレルギーにとって逆効果になることもあります。
実は、刺身や青魚がオメガ3を含有する一方で、ヒスチジンという必須アミノ酸が含まれているからです。このヒスチジンは、アトピー性皮膚炎でみんなを苦しめる痒みの原因であるヒスタミンを作り出してしまうのです。
また、ヒスチジンは細胞分裂・抗酸化・免疫を促す亜鉛を体外に排泄する作用があります。皮膚を再生させる大切な亜鉛ですから、少しでも多く体内に留めておきたいものです。
軽度のアトピー性皮膚炎であれば、体調をみながら刺身や青魚摂取することも可能ですが、重度の方であれば危険を起こさずに控えることを推奨します。どうしても食す場合には、医師に相談し、パッチテストを行うなど、自己判断はしない方がいいでしょう。
また鮮度の落ちた刺身や青魚はヒスチジンが増殖しているので、軽度も含むアレルギー疾患の方には痒みや炎症などを引き起こす可能性がります。
アレルギー疾患がない方でも同様の症状が起きる場合があります。これは、ヒスチジンが熱に強く、鮮度が落ちたものを生で食すにしても、加熱処理しても、その中毒性が下がらないからです。
ちにみにヒスチジンはヒスタミンの前駆物質です。
ヒスタミンを多く含む食品は?
ヒスタミンは鮮度が落ちているもの、発酵しているものに多く含まれます。
アクの強い野菜(ナス、ほうれん草、トマト)
ナッツ、豆類、スパイス類、チョコ
保存食品(缶詰、ハム、ソーセージ)
果物(バナナ、かんきつ類、パイナップル、パパイヤ、イチゴ)
発酵食品(漬物、チーズ、きのこ類、酢)
ビール、ワイン、ドライフルーツ、ココア、乳製品、魚の燻製
これらの食品郡は意識して避けるように心がけましょう。
まとめ
アレルギー疾患は、どうしても薬の服用に依存せねばならず、ステロイド依存性などといった副作用にも苦しめられるケースも少なくありません。お薬と同じよう毎日摂取する食生活をちょっと見直すことで、少しでも症状が軽減し、服用量が減量されたら…そう考えると、「アトピーだから。あれは食べてはダメ!」と苦痛だった食事も、楽しくなるのではないでしょうか。
健康に良い栄養価の高い青魚ですが、アトピー、アレルギーそして肌荒れのある方は食したあとの反応を注意深く観察するようにしましょう。48時間以内に変化がなければ概ね大丈夫と思っていいと思いますので体調と相談しながら食べてください。
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